2005年08月09日

憎らしくも愛しい奴。

 夕刻、夕立の気配が漂ってきたなあと思って、ちょうど窓から外を眺めているときに、雷が光った。隣で一緒に眺めていたマンちゃんがびくんと体を震わせた後、あっという間にいなくなる。最近では希な鋭い動きだった。
 何のことはない、マンちゃんは雷が怖いのだ。幼い頃から雷が鳴り始めるといつの間にかいなくなり、押入れの奥の奥だとか、ベッドの下だとか(それもやっぱり奥の奥)に隠れてしまうのだ。

 そんなときは探し出すのもひと苦労である。別に探し出さなくても、雷が鳴ってしばらくすれば再び姿を現すわけで、放っておいてもいいのだが、普段こっちの気苦労などどこ吹く風、デカイ顔でゴロゴロゴロゴロしている図太い奴が、雷ごときで緊張して小さくなっている情けない姿を笑ってやりたいので、僕は結構苦労しながらも、あっちの下、こっちの奥を覗き込んで探すのである。

 今日はどうやらベッドの下に潜り込んでいたらしく、残念ながらちょっかいを出すことはできなかった。それでも少し経って雷が収まった頃に、明らかにびくびくしながらヨレヨレとリビングに現れたので、背中を叩いて脅かしてやった。いい気味である。この半月ばかり、ナンダカンダと大変な日々を過ごしているご主人様を尻目に、惰眠を貪り続けていた報いである。

 もっとも、思いがけない事態に直面したとき、マンちゃんのスローで鈍感なさま、良くいえば大らかさは救いになったりもする。何を隠そう、今回もそうだった。
 ああ、もしも本当に○○だったら余命はどれくらいなのだろうか? 闘病生活というものはどれほど大変なのだろうか……などとグレーな気分の目線の先に、マンちゃんがスヤスヤと眠っている姿を見つけて、なぜかホッとしたのだ。
張り詰めていた神経がちょっとたわみ、気持ちと呼吸にちょっとゆとりが生まれ、視線も発想もやっぱりちょっと先まで届くようになるのである。

 そんなこんなの後だったから、だから今日は一応ちょっかいを出した後、頭を撫で、背中をさすり、そればかりかだっこでベッドまで連れて行くという慈愛を僕は示してやった。
 それなのに、奴はベッドの上で突然反抗に出て、爪を立て、結局リビングへ走り戻ってしまったのである。しかも反抗して走り去ったくせに、すぐにまた戻ってきて、今度は自らベッドの上に登り、さっさと寝支度を始めるのだから、憎らしい。そして、あっという間にゴロゴロ言いながら、眠ってしまうのだから、まったくもってかなわないのである。結局、僕はその寝姿を見つめながら、微笑むしかないのである。
 本当に、憎らしくも愛らしい奴である。

(長らく更新しなかったため、一部ご心配いただいた方々、すみません&ありがとうございます。ナンダカンダありましたが、元気です。ナンダカンダについては、またいずれ)
posted by k at 03:44| Comment(0) | TrackBack(0) | いわゆる日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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